今回は、大型二輪教習(普通二輪免許持ち)の2段階4時限目で実施する回避教習、急制動についてお伝えしたいと思います。
各教習所で違いがあるのは、コースの規模や四輪教習との兼ね合いで教習項目の進め方に違いがあるということです。
ここでは、わたしが勤務していた教習所での教習項目の進め方で説明をさせていただきますので、お通いになられている教習所での進め方と多少異なる点が発生するかも知れませんが、その点についてご了承いただいたうえでご活用いただけますと幸いです。
各教習項目の注意点やコツについては、参考にしていただけるところがあると信じてお伝えさせていただきます。
回避教習の説明
回避教習というのは、体験教習になるので技量向上を目指すものではありません。
転倒防止のため無理のないように自分のペースで体験してください。
目的は、危険な場面が発生して左右に避けるときに、どれくらいの距離が必要になるか?を把握してもらうことです。
やり方は、赤色と青色2色の信号機(手旗を使うこともあります)を使って、40キロの速度で走行してもらい体験をしてもらいます。
最初に体験方法の説明を行います。
40キロでまっすぐ信号機に向かって走行してもらいます。
体験開始地点のパイロンにバイクが入ったときに、信号機を点灯させます。
教習所によってこれからの説明は違いがありますので、当日よく聞いておいてください。
わたしは以下の説明をしていました。
赤色の信号が点灯したら左に避ける、青色の信号が点灯したら右に避ける、赤色と青色が同時に点灯したら、まっすぐのままブレーキをかけて止まってくださいと言っていました。
危険場面を想定しているので、『正確に出来るだけ素早く』避けてくださいと最後に一言添えていました。
ただ、転倒防止のために注意点として強調して説明をしていたことは、『避けながらブレーキをかけないこと』です。
避けるときにバイクを傾けている際に、急ブレーキをかけて転倒してしまうことが何度もあったからです。
広いスペースを確保しているので、避けるときはバイクがまっすぐになってからブレーキをかけて減速するようにしましょう。
回避教習(実走行)
事故防止のために念入りに説明をしたうえで、体験スタートです。
体験は2回行います。
実は、『素早く避けないといけない』という思いから、避ける方向を間違える方をよく見ました。
もちろん、単純に避ける方向を覚え間違いしていた方もおられました。
しかし、実際の事故でも左から出てきた車に対して、左に避けるという事故が発生しています。
やはり、冷静な状態でないと正しい判断が出来ないことを証明しています。
だから、この体験を通じて余裕を持って対応できるような車間距離を取っておくことが必要であることをあらためて再確認して欲しいのです。
それと40キロの速度ならすぐに避けれると思っている方が多かったのですが、実際に信号機を点灯したパイロンの場所から、どこでバイクの向きが変わったのかを指導員が伝えると、かなりの距離が必要であることを知り説明によく耳を傾けてくれました。
大型二輪は普通二輪よりも重量が重たい分、バイクの向きを変える際に普通二輪よりも距離がかかることになります。
バイクは車に比べると回避性能が落ちます。
バイクの方が軽いので軽快に回避行動が取れるように思われがちです。
実は、車の場合はハンドルを回すと同時にタイヤの向きが変わり回避行動がすぐに取れますが、バイクの場合は左にバイクを傾けるときに右に反動をつける必要があるので、車に比べるとバイクの方が回避行動はワンテンポ遅れることとなります。
このことを意識したうえで車間距離を取っていないと、危険な場面が発生したときに対応が遅れてしまい、最悪障害物を避けきれず事故になってしまいます。
コーナーリング
コーナーリングも回避教習と同様で体験教習となります。
体験してもらう内容は3つです。
1つは、同じカーブを速度を変えて走行する体験です。
1回目25キロ、2回目35キロという形で10キロ差をつけてカーブ走行をしてもらいます。
目的は、速度が変わることでバイクが外側へはみ出そうとする遠心力を体感してもらうわけですが、たった10キロの差でもバイクに大きな影響がでます。
バイクを傾けても外側にはみ出そうになったときに、注意をしなければならない事は慌ててフロントブレーキをかけるとバランスを崩して転倒してしまうことです。
事前に事故防止のための説明はありますので、しっかり聞いておいてください。
カーブ体験でふくらんだ場合は、『アクセルを戻す』ことで自然とふくらみが収まりますので、慌てて急ブレーキをかけないように覚えておいて下さい。
ここでも、普通二輪よりも重たい大型二輪の方がカーブでふくらみやすいことを把握しておくことが大切です。
2つ目は、カーブ途中での回避行動です。
最初の説明で、カーブ途中に障害物があるので『避けてください』と言われます。
何があるのか?はお伝えしません。
わたしは、接触してもよいように軽いカラーコーン(パイロン)をカーブ途中に設置していました。
ちょうど道路の真ん中に設置をしていたのですが、これには理由がありまして右と左のどちらに避けるのか?を確認するためです。
右に避けた場合は対向車線に近づくことになります。
近づくだけならよいのですが、中央線をはみ出してしまう場面も見ることがありました。
そうなると、左に避ける方が安全なのですが、実際には、障害物を右に避ける方が多かったのです。
その理由は、右に避ける方が楽だからです。
なぜ?楽なのかと言いますと左へ避けるには更にバイクを左に倒す必要がありますが、右に避ける場合は、左に傾けているバイクを起こすだけで良いのです。
つまり、右に避ける方が操作を簡単にできるので楽ということなのです。
あとは、楽とは関係なくカーブ中の速度が速い場合は、バイクをかなり傾けて走行しています。
その状態から更に左にバイクを傾けることが不可能となり、バイクを起こして右に避けるしか選択肢がない状態となる場合があります。
こうなると最悪嫌でも障害物を回避するために反対車線へ飛び出してしまうことも発生することとなり、事故の危険性がとても高くなってしまいます。
だから、次の体験につながりますが、カーブ途中では安全に止まることが出来るような速度で走行するがとても大切になります。
3つ目は、カーブ途中での停止です。
ここでは、カーブ途中でブレーキをかけて止まる練習をします。
ゆっくりブレーキをかけて止まるのではなく、カーブ走行中に危険な場面が発生して急に止まらないといけない事を想定して体験をしてもらいます。
そのため、カーブ途中でバランスが崩れることを想定したうえで、前後輪のブレーキを強めにかけてもらいます。
この体験をするときには、いつも転倒防止をために指導員がバイクを支えることができるように待機をしていました。
指導員としては強くブレーキをかけて欲しいのですが、教習生の皆さんは怖さが先行してなかなか強いブレーキをかけることが出来なかったです。
この体験は1人では出来ないですし、もちろん路上で行うことも出来ません。
この体験をするときには、怖さを振り切り強めのブレーキをかけてもらい、バランスが崩れることを体感して欲しいです。
ここで体感しておくことで、カーブ途中の急ブレーキは『やっぱり難しい』ことを再確認出来れば、見通しが悪いカーブに進入するときの速度を自然と落とすことができると思います。
ぜひ!急ブレーキをかけて体感して見てください。
急制動
急制動については、ここまでに練習をしているので課題の再確認をして繰り返しの練習を行います。
ちなみに、課題条件は速度が40キロ以上の状態でブレーキ開始パイロンに車体が差しかかったらブレーキを開始します。
晴れのときは11メートル以内、雨のときは14メートル以内で停止をすれば課題クリアとなります。
ポイントは、ブレーキ開始が遅れないように速度43キロぐらいをキープしておき、ブレーキ開始パイロンでブレーキをすぐに掛けることができるように、早めにアクセルを戻します。
ブレーキの配分は晴れのときはフロント8:リア2くらいのイメージです。
雨のときは、フロント5:リア5の配分でかけるようにします。
指導をしていてよく見たことは、クラッチを握るのが早いことです。
クラッチを握るとエンジンブレーキが効かなくなるわけですから、フロントとリアブレーキの2つに頼ることになってしまいます。
また、急制動ではエンストをしても減点にならないのでエンストさせて止まってもよいので、クラッチを早く握ることだけは注意したいところです。
あと、フロントブレーキの掛け方が弱い方が多かったです。
もっと、フロントブレーキを握ることが出来るのですが、効きすぎるための転倒の怖さがあるためなのか、握れない方をよく見ました。
そうなると、バイクが止まらないのでリアブレーキの掛け方が強くなり、リアタイヤがロックしてしまうことになります。
いきなり力いっぱいフロントブレーキを握ると転倒しますので、ぞうきんやタオルを絞るような感じで、ブレーキレバーに力を入れていき感覚を養うようにしてみてください。
よそいければ動画もご確認ください。
比較体験と模擬追突体験
この時間では比較体験といって、普通二輪車に乗って数回ですが、40キロから急制動をしてもらっていました。
その理由は、大型二輪車の『重さ』を体感してもらうためです。
多くの方が大型二輪教習車の重さに慣れてきているので、普通二輪に乗ったときに『軽い』という言葉をよく聞きました。
これから大型二輪に乗るうえで、この重さの違いを意識しておく必要があります。
重たいことは、止まりにくく、カーブではふくらみやすくなるからです。
慣れは怖くて重たいと思っていたバイクも慣れてくると重たさを感じることがなくなる場合があるからです。
もう一つは模擬追突という体験を行います。
この体験は、わざと車間距離を狭くした状態で指導員の後ろを走行してもらい、指導員が急ブレーキをかけたときに、追突をしないようにブレーキをかけてもらうという体験で、実車のバイクを使って行います。
この説明をすると、教習生のみなさんは不安そうな顔つきになり、『危なくないの?』とみなさんが思われていたと思います。
当たり前ですが、本当の事故になってはいけませんので指導員と教習生の走行する位置を左右にずらして体験を行います。
指導員が急ブレーキをかけて止まったときに、教習生のバイクが指導員のバイクよりも後ろで止まっていれば追突はしていませんが、
教習生のバイクが指導員のバイク横に並ぶことになれば、実際には追突をしていたという事になるわけです。
指導していたときには、走行位置をずらして走ってくださいと説明していたのに、真後ろを走行する方や指導員の急ブレーキに驚いて、
同じように急ブレーキをかけて転倒してしまう教習生の方をたくさん見てきました。
読者様が体験されるときには、転倒事故がないように体験練習をしていただくことを願っております。
本当にケガをする可能性がありますので、実施説明でわかりにくい部分がありましたら、必ず質問をしてくださいね。
さいごに
どの教習時間も意味があって大切ですが、この時間の教習は普通二輪車から大型二輪車に乗り換えるうえで特に大切な時間だと感じています。
車種にもよりますが、普通二輪車と大型二輪車では50キロくらいの差があります。
50キロというのは大人1人分くらいの重さになるので、普通二輪車で考えると常に二人乗りをしている感じと考えるとイメージがつきやすいのではないでしょうか?
一般的には重たくなると普通二輪で止まれていた距離よりも長くなり、普通二輪で曲がることができていた速度よりも遅くする必要があります。
危険な物を回避する場合も重たい大型二輪車の方が向きを変えるのに時間がかかってしまいます。
大型二輪車を楽しむためにも『重たさ』を常に意識しておく必要があると感じています。
次回は、2段階5時限目に行う教習内容についてお伝えしたいと思います。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
今回の内容が参考になりましたら幸いです。もとゆき
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