
高齢者講習の中で、実技として教習所内のコースを教習車で走行してもらうことになります。走行するコースについては、教習所のコースによって違いはありますが、実施する課題(講習内容)は、全国で統一されています。その課題の中で、『段差乗り上げ』という普段あまり聞きなれない運転操作をやっていただくことになります。
今回は、高齢者講習の実技の課題で行う『段差乗り上げ』について、お伝えさせていただきます。
ちなみに、わたしは20年間教習所で指導員をしていた経験があり、高齢者講習の指導員として長きに渡り担当していた経験があります。
おおむね1分間くらいの内容になります。
よろしければお付き合いください。
段差乗り上げとは?
冒頭でもお伝えさせていただきましたが、高齢者講習の実技での課題となっています。
高齢者講習では基本的にAT車(オートマチック車)を使って行います。
AT車のクリープ現象(ブレーキを離すと少しづつ前に進む)だけでは、乗り上げることができないので、10センチ程度の段差にタイヤを乗り上げて1メートル以内に止めるという課題を『段差乗り上げ』と呼んでいます。
わたしが高齢者講習を担当していたときは、ぶつかっても車に傷がつかない柔らかいプラスチックのポールを講習車の前方に立てて、
『前のポールにぶつからないように段差にタイヤを乗り上げて車を止めてください』と助手席から伝えてから、受講者の方に運転操作をしてもらっていました。
なぜ?実施するのか?
現在、高齢ドライバーの方がよく発生しているペダル踏み間違いの事故を防止するために行う課題となっています。残念ながら最近、ニュースで聞いたり、見たりする機会も増えてきたと感じています。この課題は、ブレーキペダルを踏まないといけない場面で、間違えてアクセルペダルを踏んだことを想定した課題となっています。
AT車のクリープ現象だけの遅い速度では、乗り越えることができない段差なので、アクセルペダルを踏む必要があります。
しかも、少しアクセルペダルを踏んだくらいでは、タイヤが段差に乗ってくれませんので、想像しているよりもアクセルペダルを強く踏み込む必要があります。
強くアクセルペダルを踏んでいるわけですから、タイヤが段差を乗り越えたときには勢いよく車が進行方向に進もうとします。
かなりの加速感があるので、はじめて実施すると驚きます!
そこで、アクセルペダルからブレーキペダルに足を素早く移して、ポール(1メートル以内)にぶつからないように強くブレーキペダルを踏み込み、ポールにぶつかる前に車をしっかり止めることを練習します。
なかなか、ブレーキペダルを素早く強く踏み込むことは難しく、ポールに接触する方を多数見てきました。
操作上の注意点
操作上で注意することは、タイヤが段差に乗り越えたことがわかった瞬間に、素早く右足をアクセルペダルから、ブレーキペダルに移す必要があります。
この操作については、『反射神経が遅い、速い』という事はもちろん関係していますが、普段の運転の中で、素早くペダルを踏み変える操作を頻繁に行うような運転をしている方は、ほぼおられませんので、訓練が必要だと考えています。
練習の方法を具体的にお伝えしますと、エンジンを切った状態で良いので、アクセルペダルからブレーキペダルに素早く足を移す練習をしてみてください。
何度も何度も繰り返して反復練習することで、身体が操作の感覚を覚えていきます。
この練習をしていれば、ペダル踏み間違い時に事故はしないとは言い切れませんが、
少しでも早くブレーキペダルを踏むことが出来る可能性が高まるはずです。
練習しないよりは、しているに越したことはないと思っています。
普段、運転をしているときにレーサーのように忙しくペダル操作をしていないドライバーが、とっさの場面で素早く正確に操作をすることは、年齢関係なく難しいものです。
だから、ペダルを素早く踏み変える練習も本当に試して欲しいと思っています。
ちなみに、わたしもペダルを素早く踏み変える練習をよくやっています。
本当です。
体験談
わたしが高齢者講習を担当していたときの、『段差乗り上げ』の課題を実施していたときの正直な感想をお伝えします。先ほども記載しましたが、ポール(1メートル以内に止める)にぶつかる方の割合は、おおむねですが3割くらいだったと記憶しています。
その時に感じたことは、普段運転しているときにペダルを忙しく踏み変えることをしていないので、すぐに車を止めることは難しくて当たり前だと正直に思っていました。
だから、ペダル踏み替えの練習をしておくことは大切だと強く感じています。
それから、多くの受講者の方を担当させていただき感じたことは、実はギアの入れ間違いも多かったことです。
段差乗り上げの課題を行うときに、2回実施するために段差からバックをして、またDレンジに入れて、段差に乗り上げる操作をしてもらうことになるのですが、その時に、前に進みたいのにRレンジに入れてそのままブレーキを離したときに、前進ではなく車がバックをしたために、慌ててギアをDレンジに入れようとする場面をたくさん見てきました。
うっかりDレンジとRレンジを間違えてしまい、慌ててペダルの踏み間違いを誘発する危険性もあります。
慣れた操作ではありますが、一呼吸おいて確実にギアの選択が正しいことを確認してから、ブレーキペダルを離すという基本操作を行うことでミス防止ができると感じています。
悲惨な事故がなくなることを心から望んでいます。
今回の内容が少しでも参考になりましたら幸いです。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。もとゆき
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